2-3. DNAの複製
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複製
元と同じDNAができること
染色体DNAの場合は細胞分裂の前に一度だけ起こる
複製ではまずDNA鎖が部分的に変性し、各一本鎖が鋳型鎖となり、DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)が鋳型の塩基に相補的な塩基を持つヌクレオチドを1個ずつ結合していく
重合
1個ずつ結合すること
この反応だと、親DNA鎖のそれぞれの一本鎖が娘DNA鎖に入ることになるが、この方式を半保存的複製という
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1) DNA合成反応の原則
反応の基質
基質になるヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP: deoxyribonucleoside triphosphate)
酵素は鋳型の塩基に対して相補的な塩基を持つdNTPを選択し、リン酸基が2個少ないdNMTをDNAに取り込む
結果的に二リン酸が放出される
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DNA合成は吸エルゴン反応(反応後のエネルギー状態のほうが高い反応)なので、反応にはエネルギーの供給が必要であるが、dNTPはATP(アデノシン三リン酸)と同様の高エネルギー物質あんおで、酵素は放出されるエネルギーを使って重合反応を進めることができる
プライマー要求性と3'への進行性
核酸合成反応は例外なく5'から3'の方向に延びる
DNAポリメラーゼはこの原則のもと、ヌクレオチド3'末端のOH基部分に、次のヌクレオチドの5'にあるリン酸基を連結する反応を行う
このため、DNAが延びるためには、前もって3'-OHをもつ核酸が鋳型DNAにアニールしている必要がある
このようなDNA合成の引き金になる一本鎖核酸(DNAかRNA)をプライマーという
試験管内反応では10~20塩基のDNAプライマーを使うが、細胞内では数塩基長の短いRNAプライマーが使われる
細胞内で二本鎖が複製される場合
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DNA合成の鋳型は一本鎖なので、複製する場合はまずDNAの複製起点(oriという)が部分的に変性して複製の泡(複製の目ともいう)ができ、それが大きくなって左右に拡がっていく
変性が進んでいる部分を複製のフォークという
それぞれのDNA複製の開始はプライマー合成酵素(RNA合成酵素の一種)が鋳型上につくったプライマーから始まる
複製のフォークの進行と、3'に向かうDNA合成の進行の方向が同じ側のDNA合成はスムーズに進むが、こちらの合成鎖をリーディング鎖(先行する鎖)という
他方の鋳型乗でのDNA合成は複雑で、まずフォーク付近から後方に向かって(複製開始点の方向に戻って)岡崎フラグメントと呼ばれる短いDNAができ、それが連結酵素であるDNAリガーゼで連結される
こちら側の新生鎖はラギング鎖(遅れる鎖)という
つまり、ラギング鎖は不連続DNA合成でつくられ、全体として、DNAは半不連続複製で複製されることになる
岡崎フラグメントの5'末端にはプライマーとなったRNAが結合しているため、DNAリガーゼが働く前にRNAを除く必要がある
この反応は大腸菌ではDNA pol IやRNaseHが、真核生物ではFen1などの酵素が行う
2) 細胞内で起こるDNA複製: レプリコンの複製
ゲノムが複製される場合、oriから両方向に複製のフォークが進むが、これを両方向複製という
複製はいったん始まると途中で中断せずに終点まで一気に進み、一息で複製反応を終える
レプリコン
1回の複製反応で複製される範囲
原核生物のゲノム、プラスミドやファージDNAは単一レプリコン
真核生物のゲノム(染色体DNA)は複数レプリコン
真核生物の複製は多数のoriから細胞周期のS期に同調的に起こる
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3) DNAポリメラーゼ
DNAを合成するDNAポリメラーゼには色々な種類があり、また同一細胞内にも複数種のDNAポリメラーゼが存在する
大腸菌
主要な複製酵素はDNAポリメラーゼIII(DNA Pol III)
岡崎フラグメントの中のRNAの除去や、短い領域のDNA合成はDNA pol I(pol I)
一般的に複製関連酵素にはヌクレオチド重合活性のほかに、DNAを戻りながら1個ずつ除く3'→5'エキソヌクレアーゼ活性があり、間違って取り込んだヌクレオチドを除くことができる(校正機能)
pol Iにはほかに5'→3'エキソヌクレアーゼ活性もある
大腸菌にはこのほかにも、修復に特化した複数の酵素がある
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memo: ヌクレアーゼの切断様式:エンドとエキソ
エンド(end)
核酸の内部を切断すること
エキソ(exo)
端から1ヌクレオチドずつ削り取ることをいい、3'側から削るものと5'側から削るものの2通りがある
真核生物
真核細胞内の主要な複製酵素はDNA pol δとDNA pol ε
DNA pol γはミトコンドリアDNA複製酵素、その他多くのDNAポリメラーゼは損傷乗り越え修復など、修復時のDNA合成に使われる
真核生物やそのウイルスにはこのほか、ユニークな活性をもつDNA合成酵素がいくつかある
4) 試験管内DNA合成
in vitroでDNAを合成する場合に必要な成分は鋳型となる一本鎖DNA, DNAポリメラーゼ, 酵素の活性化因子であるマグネシウムイオン($ \mathrm{Mg}^{2+})、4種類の基質ヌクレオチド(dNTP)、そして合成開始のプライマーとなる短いDNAオリゴヌクレオチド
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このようなDNA合成反応は、ジデオキシ法によるDNA配列決定法などでも用いられる
memo: DNAの化学合成
DNAは現在ではDNAシンセサイザー(DNA合成機)を使って化学合成されている
反応させたい基以外を保護した後でヌクレオチドを重合させ、糖の3'と5'の間でリン酸ジエステル結合を形成させ、この反応を繰り返す
RNAも類似の方法で合成できる
このようにして合成した数個~数十個の塩基をもつオリゴヌクレオチドはDNA合成のプライマーなど、さまざまな用途に日常的に使われている